フェミニズムは非モテ男性も救う!? エロとフェミニズムの関係 その1

近年盛り上がるフェミニズムの観点から、既存のエロコンテンツの問題や、Itonamiの位置づけを考察してみた。

すると、女性だけでなく男性も当事者として、フェミニズムと向き合うべきではないかという考えになった。

ツイートがバズった話と秋葉原事件の犯人の思想

先日、世の中の物語(映画、小説など)に関してあるツイートをしたところ、思いもよらぬ反響があった。

かなりバズった。びっくりした。何気なく発言したけど、これがどんな意味を持つのか、自分がやりたいこととの関連性も含めて、改めてよく考えてみようと思った。

今回の話題も含めて、近年男女のジェンダーにかかわる問題の議論が活発化している。#metooをはじめとして、フェミニズム運動が盛り上がっている。

このツイートで僕は、世の中に「トロフィーワイフ」型の物語、つまり、男性が求めてきた地位や権力を手にしたことを象徴する「トロフィー」として、周囲が羨望するような女性を「手に入れる」という展開の物語が、男性の幸せの形のステレオタイプになっていることを書いた。

そして、そういった物語ばかりが配信されることで、「”イイ女”をモノにすることが幸せのありかたである」という価値観が男性の中に刷り込まれているのではないか、と指摘した。

つまり、紋切り型の映画や小説が社会規範を維持・強化している側面があるんじゃないか、ということだ。

このツイートをした頃、Twitterでは秋葉原連続殺傷事件の犯人である加藤智大の言葉に共感する意見が相次ぎ、その是非が議論になっていたころだった。

「彼女ができれば人生うまくいったのに」

「不細工は生まれながらにして負け組なんだ」

彼はそんな観念にとらわれていた。そして、自分を卑下して、世間への恨みを募らせ、凶行に及んだ。

こうした加藤の言葉に男性層から共感の声が上がる一方で、フェミニストの人々からは、女性を1人の人間としてコミュニケーションする相手ではなく、自分を肯定するための「合格メダル」として見ているという批判が上がった。

確かに、彼のように女性を自己承認の道具とする価値観が生まれてしまうことは問題である。まず何より女性を傷つけうるし、承認を得られない場合は自分自身も苦しみかねない。実際、彼はそのせいで悩み苦しんだあげく、多くの他者も傷つけてしまった。

しかし実際には、彼に今なお共感が集まるように、現代の多くの人がそれに通底する考えをもってしまっている。僕もそのような考えに強くとらわれて、自信を無くして人と話したり外を出歩くのが苦痛になった時期があったし、今でもそうした観念が無いといえば嘘になる。

逆にそうしたものを感じているからこそ、それを振り払って抜け出すために、こういう文章を書いたりItonamiの活動をしているところがある。

いったい多くの人を不幸にするそのような人生観はどこからくるのだろう。どうやって形作られるのだろう。そんな文脈でのツイートだった。

あれ、これってエロコンテンツにも言えるよね?

このツイートがバズった後、よく考え直してみて、これってAVをはじめとするエロコンテンツにも同じ性格があるんじゃないか、と気付いた。

世の中に出回るエロコンテンツを思い浮かべてほしい。女性を「男性が性的欲求を解消するための道具」として扱うものばかりだ。暴力的な内容もよく出回っている。

こうしたコンテンツを男性個人が日常的に消費することで、あるいは、これらがメジャーなものとして頒布されているという事実を「女とはこういうもんだ」という社会的な共通認識だととらえることで、男性一人一人の中に「女性を道具として扱う価値観」が自然と内在化していってしまう。

結果として、女性の心や体をないがしろにするような行動に走ったり、「俺も道具が欲しい」という残酷な欲望を抱くことになる。

それだけでなく、女性自身もそれらのコンテンツから「社会的に広く求められている、慰みものとしての自分の役割」を認識し、自分の性やセックスを嫌いになったり、自尊心を持てなくなったり、あるいは役割期待を果たそうと自分を犠牲にしてまで動いたりすることになるだろう。

その結果、セクハラや性犯罪などの目に見える暴力をはじめ、同意があいまいなセックスや”bad sex(次回に説明します)”、さらに言えば社会全体における女性の抑圧や生きづらさを助長している側面があるのではないか。そんな考えがよぎった。

逆に、男女対等のパートナーシップを描いた、既存のエロに代わる新しい性のありかたを描く動画をつくって普及させていけば、そこから少しずつ一人一人のジェンダーに対する考え方を、ひいては社会全体を変えていくことができるのではないだろうか。

そうしたフェミニズムの文脈の中に、Itonamiの取り組みを位置づけることはできないか。

フェミニズムは非モテ男性も(モテ男も)救う

こう言うと、なぜ男である僕がわざわざこんなことをするのかと、疑問に思う人もいるだろう。女性のことを分かった気になって、いい人ぶってるだけじゃないのか、偽善じゃないのか、と。

もちろん僕も、男性中心の既存社会を構成する一員として、日々女性を抑圧する片棒を担いでいることに罪悪感を感じているし、それも動機の一部ではある。

しかし何よりも、「フェミニズムが(僕を含めた)いわゆる”非モテ男性”も救う」と信じていることが大きなモチベーションになっている。

先述の秋葉原事件の話を思い出してほしい。既存の価値観に苦しんでいたのは女性だけではなかったはずだ。承認を得られず、「持たざる者」「劣った者」というレッテルを貼られてきた沢山の男性たちがいたということを。

彼らも(そして僕も)また、メディアによって「女性は合格メダルであり、性欲を満たすための道具である」という間違った女性観が刷り込まれてしまったことによって、そうしたものを持てない自分に対する劣等感や、決して満たされることのない欲求不満にさいなまれているのだ。その象徴が”非モテ”というラベリングだ。

男社会である男子校や、大学での男友達との会話もそんな女性観に支配されていた。「イイ女を抱いてこそ男」だから。彼女がどれだけ美人かとか、童貞卒業したとか、リア充爆発しろとか、そんな話ばっかりだった。

お互い好きなら顔の評価なんてどうでもいいじゃん。ヤるかヤらないかも関係ないじゃん。それよりセックスの中身はどうだったの。人が誰と付き合おうと、自分に何か好きなことや大事なものがあれば別にいいじゃん。

そして”非モテ”のラベルを貼られた者たちは、「男失格の」「ダサい」「キモい」存在として、ヒエラルキーの下層に置かれるのだ。

そのうえ時には恋愛工学みたいなものに感化されて女性を傷つける言動をしたり、出会える・ヤれることをうたったビジネスにひっかかったり…

本来こんなことに悩む必要はないのに。

だってメディアが作りだした、「巨乳で、エッチなことが大好きで、目鼻が整っていて、スタイルが良くて、従順で、自分に性奉仕してくれる若いお姉さん」なんて現実には存在しないし、そもそも手に入れなくていいのだから。

本当に僕たちが必要なのは、相性の良いパートナーだったり、頼れる仲間だったり、安心できる居場所だったり、活躍できる職場だったり、良好な家族関係だったり、まったく別のものなんだ。自分が承認を得る方法、幸せになる方法は人それぞれ、色々あるはずなんだ。そして、それは意外と近くにあるかもしれない。

にもかかわらずメディアは、自分たちの出すファンタジー的なコンテンツを売るために、時には「モテる」ためのコンテンツを売るために、そんな妄想的な女性像を作り上げて、世の男性が欲しいものをそこにミスリードしているのだ。この弊害は重大だ。

僕たちはまずそこに気づかなくちゃいけない。そのために僕は、AVや漫画、アニメ、雑誌などが作ってきた幻想の女性像や、幻想のセックス像をぶっ壊したいんだ。

そうして僕たちが追い求めてきたものがまやかしだったと気付いてはじめて、じゃあ自分は本当は何が欲しいんだろう、何が必要なんだろう、と考え、幸せに向かって現実的に歩き始めることができる。変な劣等感も消えるだろうし、非現実的な欲望にも分別がつけられるだろう。

そう、この活動は何よりも自分を救うためであり、そして多くの同じような境遇の男性を救うためでもあるんだ。さらに言うと、「女には困らない」モテ男も、心は満たされずに虚しい気持ちでいるとしたら、彼らも救えるかもしれない。

だから男性たち、特に女性との関係性について何か満たされないものを感じていた人たちもまた、解放される当事者であるという意識をもってフェミニズムに関心を持ってほしいし、Itonamiの活動にも意義を感じてほしい。

AVなんてエロければいいじゃん、では済まないのは、女性だけでなく男性も同じなんだ。

非モテ男性はフェミニストの人々と共闘しよう!

もったいないと思うのが、いわゆる”非モテ”と呼ばれる人たちが、依然として女性やフェミニズムを蔑視する発言を繰り返していることだ。

彼らは自分自身を苦しめている社会規範をわざわざ必死で守っているのだ。金儲けしている奴らのために。

だから言いたい。あなたたちはいつまで幻想の女性像や画一的な評価軸にすがるのかと。いつまでメディアに踊らされているのかと。

早く気づいてほしい。あなたたちも抑圧の構造の中にいて、一緒に立ち上がらなきゃいけないんだと。

勇気ある女性たちが立ち上がったんだ。一緒に声を上げていこう。

次回予告

お読みいただきありがとうございました。

次の記事は、「エロとフェミニズムの関係 その2」として、国内外でエロ×フェミニズムの領域で実際に活躍されている方々の事例を紹介します。

AVの暴力問題についても書く予定です。

公開までもう少しお待ちください。

4件のコメント

匿名

男性とフェミニストになれます。フェミニズムは女性だけでなく、全ての人が平等な権利を全うできる社会を目指す概念です。

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誰か

自分の犯した罪を背負いきれずに、かつて自分のまわりにあったものに責任をなすりつけているように見えます。自分で自分のしたことに責任が取れないからと言って、他者の自由を侵害していいことにはなりません。

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もちづき

その犯した罪が、何が原因で起きたのかという分析自体は必要かと思います。性加害を行なってしまったことに対して本人に責任があるのは間違いありませんが、それがなぜ起きたのかという原因の究明をしない限りはまた同じようなことが続いてしまう。今後同じような性加害をなくしていく必要があり、それを果たすことこそが罪を犯したものの責任の取り方、償いの仕方なのではないでしょうか。私にはそう見えました。

山野

自分がフェミニズムに対して感じていた思いを明確に示してもらったように感じました。ありがとう。フェミニズムは女性の為のものですが、フェミニズムが救うのは女性だけではないと自分も思っています。まずは男性への呪いを解かないと解決しないですね……

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