現実へのフラストレーションを燃やす – 僕がItonamiを撮る理由 第3話

「君は生きるのが下手なんや」

僕が就活の話をすると、そのおじさんはビールを片手に笑って言った。

「せっかくいい具合に来てるのに、自分から落っこちようとしてるんだよ」

社長は、真剣なまなざしで、進路をはっきりさせない僕に熱く諭した。

そんな、僕の生き方についての話。

フラストレーションを溜めるクソな奴

僕は昔からクソみたいに頑固で怠け者だ。人からは損をしているといわれることがよくある。僕の経歴についてはここにまとめた。
高橋マジェロって誰?

僕と同じ学校を出た人は、医者や弁護士になろうとしていたり、大学で研究に打ち込んでいたり、官庁や一流企業に入ったりしている。

僕ももっと「素直に」なっていれば、そうした道を歩んでいたのかもしれない。社会が順当に連想するような、優良物件としての自分を目指すということだ。運が良かったおかげで、望めばそういう道に進むことができる環境にずっと身を置いていた。

しかし、僕は「社会が望ましいと思うこと」に純粋な気持ちで打ち込むような人間ではなかったし、自分の便宜のためにそれを演じたり、自分自身を説得することができるほど器用な人間でもない。そして、親や社会が今まで与えてくれたものに、自分に嘘をついてまで恩返しをしようとする律儀な人間でもない。

そして、それがゆえ、他人から見ても自分から見ても「もったいない」状況に身を置いていたとしても、それを変えないような人間だ。それくらいクソみたいに頑固で怠け者だ。自分を変える気がない。本当の自分が社会にウケないのなら、それはそれで生きていた方が楽だし、僕はそれでいい。

というより、変えようとしてもそのうち自分にブレーキがかかる。体がむずかゆくて居ても立っても居られなくなったり、そうして逃げ帰ってくると一生布団にこもっていたいくらい力がでなくなる。

そのくせ、結構競争心が強い。他人と比べる。周りより良い評価でいたい。目立ちたい。褒められたい。すごいねと言われたい。

だから、フラストレーションが溜まる。

これは恋愛も一緒だ。

「あなたといるメリットがないもん」

追いすがる僕に、彼女は言った。

そう、もっと自分を変えて、何らかの形で相手にメリットを与えられるようになればいいと、わかってはいる。

もっとトークを面白くするなり、お金を捧げるなり、おしゃれに気を遣うなり、体を鍛えるなり、すればいいんだ。

でも、クソ頑固で怠け者だから変えない。変えるのって、なんかムカつく。それに、いつか自分が破綻する。結局、相手より自分が可愛いんだろうね。

そのくせ、欲求が強い。求められたい。惚れられたい。あなたが欲しいと言われたい。側にいてと言われたい。求められるようなセックスがしたい。脳をとろかすような、ほわーんとしたものを味わいたい。

フラストレーションが溜まる、溜まる。

サンドバッグにしてやろう

こうして溜まったものを普段ぶちまけることがない。いつも部屋にこもっている。誰かといれば、地味でいつも一人で黙っている。話しかけられれば、みんなの言うことにニコニコしながら頷いている。真面目ないい奴、とは言われる。「変わってるね」ともよく言われる。ようはパッとしないよくわかんない奴ってこと。

「確かに」

「わかった」

「そうだね」

これで済ませちゃう。

他の人には分からないだろう、僕の中にこんなに溜まったものがあるなんて。発信してやりたい、俺にだって燃えるものがあるんだと。欲求があるんだと。人目を気にして我慢して、このままいい子ちゃんで生きて死ぬなんてまっぴらだ。

これって、悪いことでもないと思うんだ。こんなに人間が強いエネルギーを持つことって、なかなかできないと思うから。そしてそれは何か普通は困難なすごいことをする原動力になるんじゃないか。

普通は痛くて苦しいことでも、エネルギーを燃料にしたら尽きぬけていける。もちろん、いい方向にも、悪い方向にも。

それが人によっては憧れであり、悔しさであり、欲望であり、愛であり、僕の場合にはフラストレーションだってことだ。

僕はこのエネルギーをぶつけてやるものを探していた。だからといって負の方向にぶつけて自分や人を傷つけてはまずい。そしてこのプロジェクトにたどり着いた。

サンドバッグにして、ボコボコにしてやろう。スゴイものを作って目立ちたい、褒められたいという欲求や、たくさんのセックスを、愛を疑似体験して、ほわーんとしたものを味わいたいという欲求を、ぶつけてやるんだ。自分にとっても、世の中にとってもいい方向になるように。

次のお話はこちら、「エロさ」の作り方と味わい方の話。
アンチ記号化 – 僕がItonamiを撮る理由 第4話 

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