アンチ記号化 – 僕がItonamiを撮る理由 第4話

「何だかなぁ…」

タレントの壇蜜さんや橋本マナミさん。この方たちがワイドショーや週刊誌に出ているのを見るたび、心がもやもやする。

別にセクハラとかの社会問題的な話ではなくて、エロの作り方についての話だ。

エロいですよアピール、オエー

ずっと思っていることがある。

「エロいですよアピールって、ちっともエロくないよね」

ということだ。

例えばちょっと前から流行った「壁ドン」。ドラマや漫画でわざとらしく壁ドンを大写しにしているのを見ても、コントのようにしかみえない。

エロの世界にはこうした「記号」があふれている。

男性向けエロだと、おっぱい、尻、太ももを意図的に強調するのは基本中の基本で、パンチラ、潮吹き、ぶっかけなど数えきれないほどの記号の組み合わせでコンテンツができる。こういうのが僕は大嫌いだ。オエー。

女性向けエロはより文脈や雰囲気を大事にするとは言うが、実際に作品を見てみると、腕まくり、ネクタイほどく、頭なでなで、顎クイなどの記号を組み合わせて作ってある。

僕はコンテンツを鑑賞するとき、第1話で述べたように「何ともいえない、ほわーんとしたもの」を大事にしており、そうしたものはこれら記号たちのすき間にこそあると考えている。

その「ほわーんとしたもの」の正体と、なぜ記号化によってそれが失われてしまうのかについて、僕が実際にそれを味わった体験とともに考察したものを、この記事にまとめた。(近日投稿予定)

逆に上記のような記号を使えば手っ取り早くエロい感じが出せるものの、「ほわーんとしたもの」が抜け落ちてしまっているのだ。

それは記号では言い表せない何かであり、もっというと「記号になった瞬間に失われてしまうもの」なのかもしれない。壁ドンにしても、パンチラにしても、もともとはそうしたものを捉えようとしていた抜け殻のように思える。

ハンバーガーのお話

こうした記号化が起こるのは、こうしたコンテンツの制作がビジネスだからという理由が大きいと思う。

例えばマクドナルドおじさんが何か今までにないすごい美味しい食べ物を作ったとして、それを売るには、ハンバーガーという名前を付けなければならない。宣伝してお客さんに注文してもらうためだ。

それから、また作れるように再現性があるレシピをつくらなければいけない。ハンバーガー=バンズ+パティ+ピクルスのように、記号の要素に分解するのだ。

レシピをつくれば、てりやきバーガーやチーズバーガーのように新商品を開発するのも楽だ。そのうち他のレストランも同じようなレシピでハンバーガーと銘打った商品を売り出すだろう。

しかしそうして作られたハンバーガーたちはマクドナルドおじさんが作った「あの美味しい食べ物」のおいしさを残しているだろうか。何か物足りないとしたら、それはレシピにはなかった何かが欠けていたのだろう。

肉の放置時間かもしれないし、おじさんの家のにおいかもしれないし、その日の気圧かもしれない。

いや、何かが欠けていたというより、そもそもそのレシピ自体無意味なものかもしれない。バンズにパティを挟むことはその食べ物の美味しさの本質とは何ら関係が無かったかもしれないのだ。

人が捉えきれない、数えきれないほどの要素が複雑に関係しあって「あの食べ物」が完成したのだから、それはもう二度と作れないに違いない。

名もなき料理を出すお店になりたい

「すげえ、めっちゃある」

その日僕は初めて、寺町通りにある信長書店を訪れていた。

AV売り場やBL本コーナーに行くと、商品がカテゴリごとに整然と分類されている。

現在よく見るエロコンテンツは、例えば病院ものと銘打って、ナースコス+中だし+お掃除フェラといったようなレシピから作って、そうしたカテゴリーや解説文で商品を分類して、買う側もそれをもとに品定めをしているような気がするのだ。

それは、「ハンバーガーという名の何か」を食べているに過ぎなくて、「あの美味しい食べ物」のおいしさを忘れてしまうことにつながらないだろうか。

実際、僕がとても気に入った動画があって、レシピ風に言えば、騎乗位で女性が放尿と挿入を繰り返している。

それを見つけてからというもの、騎乗位ものや放尿ものとカテゴライズされている動画を片っ端から漁っているけれど、あの動画を見た時に感じた独特のほわーんとしたものは結局味わえていない。他にもそういう無名の「神動画」がいっぱいある。

だから僕は動画に説明をつけることはないし、タイトルもつけないし、カテゴリ分けもしない。脚本やカメラワークという名のレシピもない。その現場にいた二人がその時作った「二度とつくれない食べ物」を名もなき形で提供したい。

そして可能な限りの記号を排除したとき、そこにはほわーんとしたものが溢れているかもしれない。それを捉えるのが楽しみだ。

実はこの記事で書いたような問題は、今のWebサービス全体、さらには現実の都市空間でも起こっている。詳しくは下の記事に書いたので、よかったら読んでみてほしい。
「ファストデザイン」の公害。なんで儲かるだけのデザインではだめなのか。

次のお話はこちら、今「可愛い」の裏側で起こっていること。
アンチ情報の欠落、アンチ均質化 – 僕がItonamiを撮る理由 第5話

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