ドキュメンタリーへの憧れ – 僕がItonamiを撮る理由 第6話

「ママ~、弟が欲しい。どうやったらできるの?」

すごく小さいとき、一緒に湯船につかりながら、母に聞いたことがある。

「ママとパパが頑張ったらできるよ」

「じゃあ、頑張って」

結局、僕に弟ができることはなかった。

人間の交尾はどうやるの?

僕の母は教育熱心で、生き物が好きだった。僕は幼稚園や小学生のころから、「地球!ふしぎ大自然」というNHKの自然ドキュメンタリー番組を見せられたり、ナショナルジオグラフィックを読まされた。
National Geographic

休日には上野の国立科学博物館に連れて行ってもらって、動植物のはく製や模型をみたり、動物写真家の岩合光昭さんのネコやクマの展覧会に行ったりした。

これらに出てくる生き物は、すごくドラマティックに描かれていて、きれいで、愛らしかった。

動物の姿をとらえるとき、その生殖行動も大事な一部分として欠かせないわけだが、これもまた同様にきれいに撮ってあって、カマキリの交尾やサケの産卵、ミツバチの受粉がさも「感動のシーン!」と言いたげな具合に表現されていた。よく意味は分からないが「おお~、生き物はすごい」と思った。

僕はだんだん疑問を持った。

「人間は交尾をするんだろうか」

「どうやってするんだろうか」

しかし家の本棚にあった本をどんなにくまなく探しても、どんな番組を見ても、その答えが出てくることはなかった。「性交」「受精」といった言葉や子宮内部のイラストは得られても、交尾シーンは見つからなかった。

子供に見せたいサイトをつくる

僕が明快なビジュアルとともにその答えを知るのは、中学生になってインターネットでアダルト動画を見つけるまで待たなければならなかった。

最初に見たのは、ラテン系女性が大股を広げて男性を誘うバナー広告だった。母から、そういうものは有害で下品だから、見てはいけない、ということだけ言い聞かされていた。それから、僕は暇さえあれば母の目を盗んでアダルト動画を漁るようになった。

おそらく、ほとんどの日本の人が似たような過程で人間のセックスを知るだろう。最初にセックスを知るのは、命の尊厳を伝えようとする教育作品やアートではなく、男性の欲望を誘う娯楽コンテンツなのだ。

というか、さらに恐ろしいことに、それ以来大学を出るまでの間、何もセックスという行為そのものについて具体的な教育は受けていないのだ。学校でも、家庭でも、街やメディアでも。見ることができるのは扇情的な映像や煽り文句ばかりだ。

そしてそれらは社会で「恥ずかしい、下品なもの」として取り扱われている。そのタブーを犯すと犯罪者として捕まることばかり宣伝される。

なぜ動植物の交尾や産卵、受粉は、その素晴らしさを美しく描くコンテンツを、写真や番組、書籍、展示等で子供の時からたくさん触れることができ、教育も受けることができるのに、人間のセックスについては恥を忍んで享楽的なコンテンツを漁らなければ見ることができないのだろう。

だから僕は「人間の性の営みを美しくとらえる動画サイト」を作ることにした。子供はどうせいつか勝手にエロ動画を漁りだし、性に目覚める日が来るのだから、そんな時にどんなアダルトコンテンツよりも前に、セックスを恥や罪と結びつける前に、Itonamiを見てほしい。親には見せてあげてほしい。昔の自分に見せてあげたい。

人間はすごいんだよ、命を大事にするんだよ、と教えたい、自分自身に対しても。そんなサイトにしていく。

次はいよいよ最後、僕に答えを教えてくれた「スゴイ穴」のお話。
現代アートへの憧れ – 僕がItonamiを撮る理由 第7話

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