何でItonamiが必要なの? 何の役に立つの? AVじゃだめ?

ここでは、なぜItonamiが今の世の中に必要なのか、Itonamiの社会的意義について説明します。

なお、ここに書いたのはあくまで、この活動の良い副作用のようなものです。僕が活動を始めることになった原体験や原動力は実は別のところにあり、それはこちらにまとめました。
僕がItonamiを撮る原動力とポリシー 何でしたいの?何がしたいの?

(2018/12/30 追記)Itonamiの意義をフェミニズムの観点から説明した記事を追加しました。こちらも併せてご覧ください。
フェミニズムは非モテ男性も救う!? エロとフェミニズムの関係 その1

AVに代わる「教科書」が必要とされている

AVを誤解する人がいる

最近、しみけんさんや紗倉まなさん、森林原人さんをはじめとして、メディアや講演で活発に活動するAV男優・女優の方が増えてきている。こうした方々はAV界の大スターで、僕も出演作品を見ているし、どんな考えを持っているのかとても気になるので、Twitter・記事等の発信をよくチェックしている。

皆さんが口を揃えて言うのが、「AVを性の教科書にしてはいけないよ」ということである。
「AVを性行為の教科書にしてはダメ!」中大学園祭で熱く議論されたこと | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

というのも、特に性経験の浅い若い人の間で、AVを真似して実際のセックスをしようとする人が結構いるそうだ。

具体的なプレイでいうと例えば、乱暴に手マンしたり、高速ピストンしたり、精液を飲ませようとしたりするという。性的同意の話で言うと、作品内のように「女性は強引にセックスさせられたがっている」という幻想を持つ人も少なくないのだと。

その結果、パートナーが嫌な思いをする行為を強いられたり、相手のために無理をしたり、同意無きまま性交渉をして心に傷を負ったりすることがあるという。

AV男優・女優の方々は、あくまでAVはパフォーマンスであって、同じことをそのまま現実にやってもらっては困ると念を押す。

AV以外に教科書がない!

こうした言論活動を行うAV男優・女優の方や、下記の記事を書いた染矢明日香さんのように性教育に携わる方がたびたび指摘するのが、日本の性教育の貧弱な現状だ。
日本が性教育の「後進国」になりつつあるのをご存じですか(染矢 明日香) | 現代ビジネス | 講談社

例えば、以下の記事によると、中学校の教育課程で性交や避妊について扱うことは避けられているという。
中学の性教育、どこまで 危ういネットの性描写に懸念も:朝日新聞デジタル

さらに詳しく見ると、例えば以下の論文では、いかに日本の学校教育が具体性に欠け、実用的でないかが詳しく述べられている。
日本性教育協会 | 現代性教育研究ジャーナル No.87

こうした国の教育方針の理由として、染谷さんは、日本では「性教育によって子どもたちが性的な関心を増したり、性行動が早まるのでは」という見方が根強いからだと指摘している。実際には、ネット経由で玉石混交の性的な情報が子供たちにすでに届いているにもかかわらず、である。

ではもう一方で、家庭での性教育はどうかというと、例えば以下の論文によると、家庭での性教育実施率は23%(内閣府調べ, 2007)に過ぎず、日本の保護者は「道徳的なしつけ教育では済まされない、生理学的な性知識や性情報、性行動への対処などが必要とされる分野」は「学校で教える方が適している」と考える傾向があると指摘している。
CiNii 論文 – 日本の中学校における性教育の現状と課題

このように、日本の子供たちは、性教育を学校と家庭との間でたらいまわしにされたまま、アダルトコンテンツに出会ったり、性経験を重ねていく、という構図が見てとれる。

これらは僕自身の経験とも合致している。詳しくはこの記事を参照してほしい。
ドキュメンタリーへの憧れ – 僕がItonamiを撮る理由 第6話

もう一つ述べておきたいのが、日本では性的コンテンツに対する法的規制や、社会における「いやらしいもの」というタブー観が強すぎて、扇情的なポルノだけでなく理性的・科学的な性に関する言説や表現行為までも、公共の場に出て来ずらくなっているのではないか、ということである。

OMGYESというサービスは、以前僕が利用してとても印象的だった。ここではモザイクなしのインタラクティブな動画とともに、女性器でオーガズムを得るための刺激方法が解説されている。
OMGYes

最初はあまりにリアルでショッキングだったが、少し使ううちに性生活を送るうえで大変有益なコンテンツだと分かった。

同じようなものが日本で出てきたとしたら「いやらしい、卑猥なもの」であり、流通は規制・自粛されるべきだろうか。

日本の男性が皆これで学習したら、間違っても女性を気持ちよくさせるために、高速で手マンを繰り返そうとは思わないのではないだろうか。性的快感を得られる女性が増えたら、社会の幸福度も上がるのではないか。

AVは悪ではない、負担過剰なだけ

ここまでの文章で、AVをやり玉に挙げて貶めているように感じられた方がいるかもしれない。

断っておくと、僕もAVは社会的にも価値あるコンテンツだと考えているし、好きな作品もたくさんある。AVは僕たちの膨れ上がる行き場のない欲望を吸収し、夢を提供してくれる。

今のAVが過剰な役割、社会的責任を求められすぎているだけなのだ。性の教科書としての需要をAVに代わり引き受けられるものを作れないだろうか。

「性の事例集」をつくる

性の「教科書」ってちょっと心細いな

こうした現状を受けて、独自の性教育コンテンツを提供しようと立ち上がっている人たちがいる。

例えば森林原人さんはクラウドファンディングをして、YouTubeで見られる青少年向けの性教育動画を作ろうとされている。
スマホ世代向け〈学校では教えてくれない〉本当の性教育〜誰も傷つかないための知識〜 – CAMPFIRE (キャンプファイヤー)

このような実践的な教育をするコンテンツを動画サイトに公開することは、とても素晴らしいことだと思う。誰でも、一人でスマホで見られるというのは、まさに現状にぴったりのやり方だ。

動画の中で扱われるトピックには、避妊や性病防止などの知識・技術や、セックスを楽しむうえでのマナーやモラル、考え方などが挙げられている。今日本で行われている性教育のイベントや講義、書籍などで一般的なのは、このような内容だと思う。

実際、先述の染矢明日香さんも、このようなマンガ教材を発行されている。
マンガでわかるオトコの子の「性 」 | 染矢明日香, 村瀬幸浩, みすこそ |本 | 通販 | Amazon

しかし、率直なところ、僕はこうした内容だけで世の中に送り出されてしまったら、まだ心細いと感じてしまう。

なぜなら、「こういうことに気を付けよう」「性には多様性がある」というお話を聞いた後で、実際に具体的にお互いにとって幸せなコミュニケーションを模索して、良好な関係性を築いていくのは、自分とそのパートナー自身にゆだねられているからだ。

とても不安である。あとは自分たちで、NG例や予備知識を頭に入れながら、一から実践方法を模索していかなければいけない。他人にもなかなか相談しにくい。そんなとき、「具体的なOK例をたくさん知れたら、心強くて安心できるなぁ」と率直に思うのだ。

こうしたニーズに、AVに代わって明快なビジュアルとともに応えてくれるコンテンツはまだ存在していないのではないだろうか。個別具体的な性のあり方にヒントを提示するような、もう一歩踏み込んだコンテンツは提供できないだろうか。

もちろん、誰かに勝手に「正解」を規定されて、みんなそれを教え込まれてしまうなんてことになれば、すごく怖い話、息苦しい話だ。セックスには正解なんてなくて、カップルの数だけ答えがあるはずだから。

だから、ただただ無数のフィクションなしの事例を集めた「性の事例集」をつくりたい。それをどう感じるか、どう活用するかは見る人それぞれの自由にしたい。さらには、それを見てフラットな議論や相談ができる場にもできたら、と思う。

幸せな性生活を追求するための手助け

こうした事例集を作ることでまず期待できるのが、他の人のセックスを知ることで、自分たちの参考にできるということだ。

どうしたらいいのかわからない、性経験の浅い人たちはもちろん、いつもあまり気持ちよくなくて悩んでいる人や、マンネリ化してしまった人、セックスレスの人が、「他の人はこうやってるんだ」「こういうやり方もあるんだ」と知ることができる。

特定の視聴者のための演技や脚本を含まないので、より双方にとって無理のない、より快感や幸福感のあるセックスのあり方を模索できるのではないか。

性欲への罪悪感や恐怖感を和らげる

また、自分自身やパートナーが性欲を持つことに対し、嫌悪感や恐怖感を持つことが誰でもあり、それがすごく強い人もいる。

それは、リアルな性の話題を他人と話しずらい上に、一方的な欲望を発露するような、誇張されたコンテンツばかり目にすることで、性欲に対するネガティブな想像が膨らんでしまうからではないだろうか。

実際、コンビニを歩くだけでも、胸に水しぶきを乗せた女性の水着写真が並んでいたり、スマホでニュースを見るだけでも、女性を監禁して乱暴する漫画のバナー広告がくっついてきたりする。Twitterは匿名をいいことにセクハラ発言ばかりだ。

加えて、性欲による恐ろしい事件、そしてそれらに対する懲罰的な報道や意見ばかりがメディアにあがることも理由にありそうだ。

ニュースではレイプや痴漢などの事件が大体的に取り上げられて、それに対する非難の意見がSNSにあふれる。

これでは男である自分が罪に思えてくるし、自分が女性だったら男って怖いだろうなと思う。

今よりもっと、実在の2人が心地よさそうにしている姿を見られるようになったら、自分の性欲を肯定できたり、他者の性欲に対して安心したりする助けにはならないだろうか。

他者の性への妄想をなくす

LGBTの人たちの性をはじめ、障がい者と呼ばれる人たちの性、自分と違う性的嗜好を持った人の性を理解するのは難しいと思う。いや、そもそも他人のことを本当に理解するなんてできっこなくて、おこがましいことかもしれない。

でもだからといって、勝手に想像を膨らませて卑下したり、心に壁を作ってしまうのはもったいないことだと思う。

僕は、彼らのことを面白おかしく誇張して描くようなコンテンツを色々目にしてきた。この問題は、「一般的とされているセックス」に関するコンテンツのファンタジー性の問題と同じか、あるいはそれ以上かもしれない。

Itonamiというリアルな事例集を、興味本位でいいから見ることで、無用なネガティブな想像を打ち消して、お互いに親近感を持つことができたら、もっと世の中はよくなるはずだ。

自分の性に自信を持てるように

逆に、自分のことが、世の中で面白おかしく描かれていたり、卑下するような発言を見聞きしたりして、「自分はおかしいのかな」「劣った存在なのかな」と不安に思う人がたくさんいるはずだ。マイノリティの方たちがそういう話をしているのをよく目にする。もちろん、僕自身も発達障害についても性的嗜好についてもマイノリティな側面を持っていて、同じような感情になることがある。

そんなとき、実際にそうした人たちがカップルになり、幸せそうにセックスしている姿を見ることで、安心して、自信を持てて、勇気づけられる人がいるのではないだろうか。

例えば僕は栗原類さんや米津玄師さんが、自身の発達障害を告白して活躍する姿を見た時、とても勇気づけられた。自分も世の中の人を喜ばせられるかもしれない、と思うことができた。それは、性に関しても同じものがありはしないだろうか。

人間の命の尊さ、素晴らしさを再認識する

僕はこの記事で、生物ドキュメンタリーのように人間のセックスを美しく描きたいと書いた。
ドキュメンタリーへの憧れ – 僕がItonamiを撮る理由 第6話

たくさんのイトナミの動画をアーカイブにすることを通して、人間という生き物の素晴らしさ、命の尊さを、あらためて捉えなおすことはできないだろうか。

さいごに

このように、Itonamiは誰かを幸せにすることができるコンテンツだと信じている。僕がつくる動画が、それを必要とする数少ない誰かのもとに届いてくれたら嬉しい。 

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